「稽留流産と診断されたけれど、自分に原因があったのだろうか」「つわりが急になくなったのは稽留流産の兆候なのか」と不安になっていませんか?
稽留流産は、自覚症状がないまま進行することが多く、多くの人が「気づけなかった自分」を責めてしまいがちです。
しかし、稽留流産の原因の多くは、あなたの過ごし方とは関係のない偶発的なものであることが分かっています。
本記事では、稽留流産の原因や確率・兆候などの特徴を分かりやすくまとめています。
- 稽留流産とは?流産の種類と定義を確認
- 稽留流産の最も多い原因
- 稽留流産が起きる確率
- 気をつけたい稽留流産の兆候・症状
- 稽留流産しやすい人の特徴といまからできる健康管理
- 稽留流産と診断された後の流れと心のケア
稽留流産とは?流産の種類と定義を確認しよう
稽留流産とは、妊娠22週未満に、胎芽(たいが)または胎児が子宮内で死亡した後、出血などの症状がないまま子宮内にとどまっている状態のことです。
妊娠22 週未満に胎芽あるいは胎児が子宮内で死亡後、症状がなく子宮内に停滞している状態
日本産婦人科学会
稽留流産の特徴は、出血や腹痛といった自覚症状がないことです。
そのため、妊婦健診の超音波検査で初めて指摘されるケースが多く、本人が予期していない状況になるため、診断時のショックが大きくなりやすいのです。
流産の定義【妊娠22週未満】
そもそも流産とは、妊娠したにもかかわらず、妊娠22週より前に妊娠が終了してしまう状態を指します。
妊娠12週未満の流産を「早期流産」、妊娠12週以降22週未満の流産を「後期流産」と呼びます。
稽留流産の多くは、妊娠初期にあたる早期流産の時期に起こります。
稽留流産と他の流産の種類との違い
流産は、症状や進行の状態によっていくつかの種類に分けられます。
| 流産の種類 | 状態の特徴 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 稽留流産 | 胎児が子宮内で死亡し、停滞している | 症状がないことが多い |
| 進行流産 | 胎児や付属物が子宮外へ排出されつつある | 出血・腹痛をともなう |
| 完全流産 | 子宮内容物が完全に排出された | 出血・腹痛が落ち着いていく |
| 不全流産 | 子宮内容物の一部が残っている | 出血・腹痛が続く |
| 化学流産 | 妊娠検査薬陽性後、超音波で確認前に流産 | 生理のような出血 |
稽留流産は、症状がないまま子宮内に停滞しているケースのことで、出血や腹痛をともなう進行流産とは異なります。
また切迫流産という言葉もありますが、切迫流産は「流産しかかっているが、まだ妊娠継続の可能性がある状態」であり、流産が確定した稽留流産とは意味が異なります。
稽留流産は「よくあること」でもある
流産は、決して稀な出来事ではなく、「妊娠の15%は自然流産に終わる」と日本産婦人科学会でも報告されています。
また、妊娠したことがある女性のうち38%が流産を経験しているという報告も紹介されています。
「自分だけが特別な失敗をした」わけではなく、多くの女性が経験しうる出来事であると知ることは、あなたの心を守るうえで大切です。
稽留流産の原因は?最も多い原因を確認しよう
稽留流産と診断された人が最も知りたいのは、「なぜ稽留流産が起きたのか」という原因ですよね。
結論からお伝えすると、稽留流産の原因の多くは、胎児側の偶発的な染色体異常であり、あなたの行動が招いたものではありません。
稽留流産の原因で最も多いのは「胎児の染色体異常」
妊娠初期に起こる稽留流産の原因として、最も多いのは胎児の染色体異常によるものです。
妊娠12週までの流産を「早期流産」、妊娠12週以降~22週未満の流産を「後期流産」と言い、ほとんどが妊娠12週までの早期流産です。この時期の流産の50~60%は受精卵の異常(染色体の病気)と言われていて、現在の医療では治療することはできません。つまり、お母さんの日常生活などに原因があるわけではありません。
国立成育医療研究センター「流産について」
染色体異常の多くは、精子と卵子が受精する過程で偶然に生じるもので、夫婦の染色体が正常でも起こり得ます。つまり、受精した時点ですでに流産の方向が決まっているケースが多いのです。
あなたの過ごし方が稽留流産の原因ではない理由
稽留流産を経験した方の多くが、「あのとき無理をしたから」「仕事を続けたから」と自分を責めてしまいがちですが理由は全く異なります。
妊娠初期の流産の多くは胎児側の偶発的な染色体異常によるものと言われており、以下の日常行動は稽留流産の原因にはなりません。
- 仕事や家事、通勤などの日常的な活動
- 適度な運動やストレッチ
- 性交渉
- 妊娠に気づく前の飲酒や服薬(多くの場合)
- 妊婦健診での内診や超音波検査
「自分が気をつけていれば防げた」という考えは、医学的な根拠に乏しいため、自分を責めすぎないようにしましょう。
流産に母体側の要因が関わる場合もある
一方で、繰り返す流産(反復流産・習慣流産)の場合には母体側の要因が関わっていることもあります。
- 子宮の形態の異常(子宮奇形など)
- 甲状腺機能などの内分泌の異常
- 血液が固まりやすい体質(血液凝固の異常)
- 免疫の異常
こうした要因は、流産を2回以上繰り返す場合に、不育症の検査で調べる対象となります。
1回の稽留流産で母体側の原因を過度に心配する必要はありませんが、繰り返す場合は専門的な検査を検討してもらいましょう。
稽留流産が起きる確率はどのくらい?【年代別で比較】
「稽留流産の確率はどのくらいなの?」「20代や30代の妊娠では違うの?」と疑問に思ってしまいますよね。
稽留流産が起きる確率を知ることは、必要以上に恐れず、かつ現実を受け止めるために役立ちます。
流産全体の確率は約15%で、流産の確率は年齢とともに上昇
妊娠の約15%は自然流産に終わります。流産率は年齢とともに上昇し、40歳を過ぎると妊娠しても40%以上が流産するといわれています。妊娠したことがある女性のうち、38%が流産を経験しているという報告もあるように、流産は決してまれではありません。
日本産婦人科学会
稽留流産は、この自然流産のうち、症状がないまま進行するタイプにあたります。妊娠初期の流産の多くが稽留流産の形をとるため、流産全体の確率は稽留流産を考えるうえでの基本の目安になります。
また流産の確率で最も重要なのは、年齢とともに上昇するという点です。加齢によって卵子の染色体異常が起こりやすくなることとが関連しています。
20代・30代・40代の年代別の流産確率
年代別の流産確率は、以下の傾向がありますが、稽留流産単独の確率ではない点に注意しましょう。
| 年代 | 流産確率の傾向 |
|---|---|
| 20代 | 比較的低く、全体平均(約15%)を下回る傾向 |
| 30代前半 | 全体平均に近い水準で推移する |
| 30代後半 | 30代前半より上昇する傾向 |
| 40歳以上 | 40%以上に上昇する傾向 |
日本産科婦人科学会は、「40歳以上で40%以上」が流産すると示しており、年齢の影響が大きいことが分かります。
とはいえ、 20代だから絶対に大丈夫という保証はなく、30代でも過度に恐れる必要はないと考えましょう。
どの年代であっても、流産は一定の確率で起こり得るため、年齢だけが原因ではなく全体の傾向を見ることが大切です。
流産の確率の数字とどう向き合うか
流産の確率の数字は、あなたを不安にさせるためのものではなく、現実を冷静に受け止めるための道具にしていきましょう。
- 流産は約15%という一定の確率で起こる自然な現象である
- その多くは胎児側の偶発的な要因によるものである
- 年齢は確率に影響するが、個人の結果を決めるものではない
これらを理解しておくことで、次の妊娠に向けて前を向く力が生まれてきます。確率の数字に囚われすぎずに、味方につける姿勢を持っていきましょう。
気をつけたい稽留流産の兆候・症状!つわりの変化との関係は?
「稽留流産に兆候はあるのか」「つわりがなくなったのは稽留流産のサインなのか」という不安を持ってしまいますよね。
稽留流産の症状の特徴とつわりとの関係について丁寧にお伝えしていきます。
稽留流産は自覚症状がないことが多い
稽留流産の特徴として、出血や腹痛などの自覚症状がないことが多いです。
稽留流産の場合は、胎児が子宮内で死亡しても、すぐには体外へ排出されず停滞するため、体の変化としては現れにくいのです。
そのため、稽留流産は妊婦健診の超音波検査で、胎児の心拍が確認できないことによって診断されるケースが大半です。
稽留流産ではつわりが軽くなる・なくなることがある
稽留流産のサインとして、挙げられるのが「つわりが軽くなる・なくなった」といった変化です。
妊娠が継続していると分泌されるホルモンが胎児の死亡によって減少し、つわりの症状が軽くなったりすることがあります。
そのため「急につわりが楽になった」ことを不安に感じる方は少なくありません。
つわりの変化だけで稽留流産とは判断できない
稽留流産でつわりの変化があるとお伝えしましたが、つわりの症状はもともと個人差が非常に大きいという特徴があります。
- つわりが妊娠初期から軽い人やほとんどない人もいる
- つわりは妊娠の経過とともに自然に軽くなっていくのが通常の過程
- 体調や日によって、つわりの強さは変動する
つまり、つわりが軽くなっていくこと自体は多くの場合は正常な変化であり、稽留流産に直結するわけではありません。
つわりの変化だけで自己判断して落ち込む必要はなく、稽留流産の診断は超音波検査によってのみ確定します。不安なときは1人で抱え込まず、かかりつけの産婦人科に相談してください。
少量の出血や下腹部の違和感が出る場合も
稽留流産では自覚症状がないことが多いものの、なかには少量の出血や下腹部の違和感が現れる場合もあります。
妊娠初期の出血には、稽留流産以外にもさまざまな原因があり、出血があっても妊娠が順調に継続するケースも多くあります。
そのため出血があった場合も、あわてて最悪の結果を想定するのではなく、まずかかりつけの産婦人科を受診して原因を確認することが大切です。
稽留流産しやすい人の特徴といまからできる健康管理
「稽留流産しやすい人には、どんな特徴があるのか」を知りたい人は多いですよね。
ここでは、リスク因子として指摘される特徴とあなたがいまからできる健康管理について説明します。
流産しやすい人の特徴
流産しやすい人の特徴は一概には言えませんが、以下はリスク因子として考えられます。
- 年齢が高い
- 流産を繰り返した経験がある
- 喫煙習慣がある
- 過度の飲酒習慣がある
- 糖尿病や甲状腺疾患などの持病のコントロールが不十分
- 強い肥満またはやせがある
- 過度な運動の習慣がある
- 無理な姿勢を継続する
流産の影響が大きいのは年齢ですが、年齢は変えることができません。
一方で、喫煙・飲酒・持病の管理・体重・運動量などは生活習慣を改善できる余地があるため意識すると良いでしょう。
「流産しやすい人の特徴」に当てはまっても自分を責めない
流産しやすい人の特徴やリスク因子に当てはまる項目があっても、稽留流産の直接的な原因になるかはわかりません。
繰り返しになりますが、妊娠初期の流産の多くは胎児側の偶発的な染色体異常によるものです。
流産のリスク因子の考え方は、確率を下げるために生活習慣を変えることができる要素として考えられるもののため、当てはまるからといって過度に不安を持つ必要はありません。
いまからできる健康管理(プレコンセプションケア)
プレコンセプションケアとは、将来の妊娠や自分自身の健康に備え、妊娠可能な年齢の男女が生活習慣や健康状態を見直す取り組みのことです。
- 禁煙・節酒:自分自身とパートナーの両方で取り組むことが理想です
- 持病のコントロール:糖尿病や甲状腺疾患がある場合は、主治医と管理を続けます
- 葉酸の摂取:妊娠初期の神経管閉鎖障害の予防のため、妊娠前からの摂取がすすめられています
- バランスのよい食事と適正体重の維持
- ワクチン接種歴の確認(風疹など)
稽留流産を起こさないために取り組める健康管理や次の妊娠管理に向けて前向きに取り組める健康管理は複数あるため、意識して改善していきましょう。
流産を繰り返す場合は不育症の相談
流産を2回以上繰り返す場合は、不育症の可能性を考えて専門的な検査を検討する必要があります。
不育症の検査では、子宮の形態・内分泌・血液の固まりやすさ・免疫などの母体側の要因を調べます。
原因が見つかれば、次の妊娠に向けた治療につながる場合もあるため、不安を抱えるよりもまずは検査で現状を知ることも大切です。
稽留流産と診断された後の流れと心のケア
稽留流産と診断された後、身体と心に訪れる変化を知っておくことは、あなたの支えにあるでしょう。
ここでは、稽留流産と診断された後の一般的な流れと心のケアについてお伝えします。
稽留流産の診断後の処置の選択肢
稽留流産と診断された場合、その後の対応にはいくつかの選択肢があります。
- 自然排出を待つ:子宮内容物が自然に排出されるのを一定期間待つ方法
- 子宮内容除去術(手術):子宮内に残った内容物を取り除く処置を行う
- 薬による治療:子宮収縮を促す薬を用いる方法
どの方法が適しているかは、妊娠週数や身体の状態・あなたの希望によって異なるため、担当の医師と相談して決めていきましょう。
次の妊娠に向けた身体の回復
稽留流産の処置後は、子宮内容物がすべて排出されると、多くの場合1ヶ月〜2ヶ月ほどで生理が再開します。
生理のリズムが戻れば、身体は次の妊娠が可能な状態に回復していきます。
次の妊娠を試みる時期については個人差があるため、担当医と相談しながらあなたの体と心のペースで決めてください。
稽留流産後は、心のケアも大切にする
稽留流産は、身体の回復だけでなく、心の回復にも時間が必要な出来事です。
あなたが悲しみや喪失感、自分を責める気持ちを抱くのは自然なことであり、無理に前を向こうとしなくて構いません。
1人で抱え込まず、パートナーや信頼できる人、専門機関を頼って、あなたの心と身体を大切にしていきましょう。
